2026年10月17日土曜日

それぞれの、働く理由|働くことの意味|働けることが当たり前ではない日


 朝七時。

目覚まし時計が鳴る前に、健一は目を覚ました。

 三十五歳。

以前は物流会社の倉庫で働いていた。

荷物の仕分けや在庫管理。

毎日、時間に追われる仕事だった。

忙しい日には、早く休みにならないかと何度も時計を見た。

 そんな健一が仕事を離れたのは、半年前のことだった。

体調を崩し、しばらく休職することになった。

最初のうちは、休めることに少し安心していた。

 けれど、日が経つにつれて気持ちが変わっていった。

朝起きても、行く場所がない。

誰かに頼まれる仕事もない。

友人たちが働いている時間、自分だけが取り残されているように感じた。

「早く元に戻らなきゃ。」

そう思うほど、焦りが大きくなった。

 ある日、久しぶりに職場の先輩から連絡があった。

「元気にしてるか?」

健一は、うまく答えられなかった。

すると先輩は言った。

「仕事のことは気にしなくていい。まずは体を大切にな。」

その言葉を聞いて、少しだけ肩の力が抜けた。

仕事に戻ることばかり考えていた。

でも、今の自分に必要なのは、無理に以前の生活へ戻ることではないのかもしれない。

それから健一は、少しずつ生活のリズムを整え始めた。

 朝、決まった時間に起きる。

近所を散歩する。

体調の良い日には、図書館まで歩いてみる。

小さなことばかりだった。

それでも、一日を自分の足で進んでいる気がした。

 ある朝、通勤する人たちとすれ違った。

以前なら、焦りを感じていた光景だった。

でも、その日は少し違った。

働けることは、決して当たり前ではない。

そして、働けない時間にも、その人の人生は続いている。

 健一は空を見上げた。

いつかまた、自分に合った形で働ける日が来るかもしれない。

今は、その日のために自分を大切にしよう。

そう思いながら、ゆっくりと歩き始めた。


#働くことの意味
#休職と復職
#自分らしい生き方 

0 件のコメント:

コメントを投稿

それぞれの、働く理由|働くことの意味|働けることが当たり前ではない日

 朝七時。 目覚まし時計が鳴る前に、健一は目を覚ました。  三十五歳。 以前は物流会社の倉庫で働いていた。 荷物の仕分けや在庫管理。 毎日、時間に追われる仕事だった。 忙しい日には、早く休みにならないかと何度も時計を見た。  そんな健一が仕事を離れたのは、半年前のことだった。 体...