――あと一日、早ければ――
その学生は、一次面接から評価が安定して高かった。
明るさと論理性のバランスがよく、チームにもすぐ溶け込めるだろうという安心感があった。
最終面接後の評価会議では、ほぼ満場一致。
「ぜひ迎えたい」という空気が、会議室を包んでいた。
だが、問題は一つだけあった。
彼は、他社の最終選考も同時に進んでいた。
「できるだけ早く連絡を」
そう確認していたが、社内の決裁にわずかな時間がかかった。
翌日、電話をかけると、彼は丁寧にこう告げた。
「御社も最後まで迷いました。
ですが、本日、別の会社にお返事をしました。」
声に迷いはなかった。
きっと熟考の末の決断だったのだろう。
受話器を置いたあと、しばらく動けなかった。
評価が足りなかったわけではない。
枠がなかったわけでもない。
ただ、“決断の速さ”という一点で、わずかに他社に先を越された。
採用とは、選ぶ側だけの意思では完結しない。
選ばれる側にも、人生の時間軸がある。
彼は、間違いなく惜しかった。
そして私たちは、あと一日の差を、静かに悔やんだ。
#面接官の視点
#惜しかった学生
#他社との競合






