就活物語
「質問の質が変わった日」
「最初は、普通の子だと思っていました。」
ナナミの初日の印象を聞かれたら、たぶん私はそう答える。笑顔も挨拶も申し分なく、真面目そうな子。でも正直、他の学生たちと大差はなかった。
だが、三日目に変化が起きた。
午前中の社内見学が終わったあと、彼女はこう言った。
「見学して気づいたんですが、御社の○○業務は、他社と流れが少し違う気がしました。何か意図があるのでしょうか?」
その質問は、ただの疑問じゃなかった。観察したうえで、自分なりに考え、深堀りしようとする姿勢があった。
その日から、彼女の質問は変わった。表面的な「なぜですか?」から、「こういう理解で合っていますか?」「今後、自分がこの業務を担うならどうすべきか?」と、自分ごととして考えるようになっていった。
最終日の発表では、課題に対して具体的な提案まで含まれていて、チーム社員たちも驚いていた。
ナナミは特別なスキルがあったわけではない。
でも、“考える力”と“成長の早さ”があった。
ただ情報を受け取るのではなく、吸収して変化する力。それが、職場では何より大事だ。
私は迷わず、彼女の名前に○をつけた。
一緒に働きたいと思える学生だった。
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