【第11話】「空白期間」を書けなかった日
「2023年4月~2024年3月」
履歴書の学歴・職歴欄。その1行に、どうしても書けない時期がある。隼人にとって、それは心と身体を休めていた一年だった。
「何もしていませんでした」と書くわけにもいかず、「自己研鑽中」や「資格取得準備中」と書いてみる。でも、嘘ではないけど、本当でもないような気がした。
画面の前で何度も削除と修正を繰り返す。
そのとき、ふと当時つけていた日記の1ページが目に入った。「今日は午前中、散歩した。夕方には久しぶりに本を読めた」
ゆっくりだけど、確かに自分を取り戻していた時間だった。
それも、書いていいんじゃないかと思えた。
「心身の回復と、生活の立て直しの期間」
そう書いた時、ようやく隼人の時間が、自分の言葉で履歴書に刻まれた。
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