【第12話】「たった一枚」に時間をかけすぎて
エントリーシートを1枚仕上げるのに、気づけば丸2日かかっていた。
「もっといい言い回しがあるかも」「ここ、削った方がスマートかも」
書いては消し、また書き直し、気がつけば朝。
部屋の隅には、くしゃくしゃになった紙の山。
「まだ完成じゃない」と思いながらも、どこが“完成”なのか、自分でもわからなくなっていた。
そんな時、スマホに届いた友達の一言が目に留まった。
「出したら、また次がある。全部一発勝負じゃないよ」
葵は肩の力を抜いて、最後にひと息ついて送信ボタンを押した。
“完璧”じゃなくても、“出し切った”と思える一枚。それが今の、等身大の葵だった。
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