「どうして、こんな簡単なことができないんだろう。」
パソコンの画面を見つめながら、直樹はため息をついた。
二十六歳。
IT企業に入社して四年目になる。
同期の中には、大きなプロジェクトを任されている人もいる。
後輩から頼りにされ、会議でも自信を持って発言している。
直樹も、そんな社会人になりたかった。
仕事が速く、何でも知っていて、周りから頼られる人。
それが、自分の考える「仕事ができる人」だった。
ところが現実は違った。
新しいシステムの仕様が理解できず、何度も資料を読み返す。
分からないことを先輩に聞くのも気が引ける。
結局、一人で抱え込み、予定より作業が遅れてしまった。
ある日、進捗会議のあとで上司に呼ばれた。
「直樹くん、どうして早く相談しなかったの?」
責められると思い、うつむいた。
すると上司は、少し笑って言った。
「仕事ができる人って、全部一人でできる人じゃないんだよ。」
直樹は顔を上げた。
「自分に分からないことがあると気づいて、必要な人に助けを求められる。それも大切な能力なんだ。」
その言葉は、意外だった。
翌日、直樹は思い切って先輩に声をかけた。
「この部分、一緒に確認してもらえませんか。」
先輩は快く応じてくれた。
説明を聞きながら、ようやく問題の原因が見えてきた。
数日後、作業は予定していた形で完了した。
直樹一人の力ではなかった。
でも、自分から相談したことで仕事が前に進んだ。
帰り際、後輩が質問に来た。
直樹は少し考えてから答えた。
「そこは僕も迷ったところだよ。一緒に確認しようか。」
後輩は安心したように笑った。
仕事ができる人になりたい。
その気持ちは、今も変わらない。
ただ、目指したい姿が少し変わった。
何でも一人でできる人ではなく、周りと一緒に仕事を進められる人。
直樹は、そんな社会人になりたいと思った。
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