「本当に、この仕事が好きなの?」
友人にそう聞かれたとき、美咲はすぐに答えられなかった。
美咲は二十五歳。
大学を卒業してから、食品メーカーの営業部で働いて三年目になる。
学生時代は、デザインの仕事に憧れていた。
色を組み合わせたり、何かを形にしたりすることが好きだった。
けれど、就職したのは営業職。
最初は、人と話すことも得意ではなかった。
何度も失敗し、向いていないと思ったこともある。
それでも、少しずつ仕事を覚えた。
お客様の話を聞き、困っていることを一緒に考える。
気がつけば、営業成績も安定していた。
「美咲さんは、人の気持ちをくみ取るのが上手だね。」
上司からそう言われたこともある。
でも、心のどこかに小さな疑問が残っていた。
好きだったデザインの道を選んでいたら、今頃どうなっていただろう。
ある日、担当するお店から相談を受けた。
新商品の売り場を、もっと魅力的にしたいという。
美咲は思い切って、商品の並べ方や色の組み合わせを提案した。
数日後、お店から連絡があった。
「おかげで、お客様が足を止めてくれるようになりました。」
その言葉が、うれしかった。
営業の仕事をしているからこそ、デザインの知識を生かせる場面がある。
好きなことと、向いていること。
ずっと別々のものだと思っていた。
でも、必ずしもどちらかを選ばなければならないわけではない。
帰り道、美咲は少し笑った。
今の仕事の中にも、自分の好きなことを見つけられる。
そんな働き方があってもいいのかもしれない。
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