2026年11月1日日曜日

それぞれの、働く理由|正社員を辞める選択|正社員を辞めて、見つけたもの


 「本当に、辞めてしまって良かったのかな。」

平日の午前十時。

カフェの窓際でコーヒーを飲みながら、麻衣はそんなことを考えていた。

三十八歳。

十五年間勤めた会社を、三か月前に退職した。

 大学を卒業してから、ずっと正社員として働いてきた。

営業事務から始まり、後輩の指導や部署の業務改善も任されるようになった。

仕事には責任があり、収入も安定していた。

周囲から見れば、順調な社会人生活だったと思う。

けれど、いつの頃からか、毎日が同じことの繰り返しに感じられるようになった。

 朝早く家を出て、夜遅く帰宅する。

休日は疲れを取るだけで終わってしまう。

「この先も、ずっと同じ生活を続けるのかな。」

そんな疑問が、少しずつ大きくなっていった。

退職を決めたとき、周囲からは何度も引き止められた。

「もったいないよ。」

「次の仕事が決まってからの方がいいんじゃない?」

その言葉は、どれも間違っていないと思った。

 麻衣自身も、将来への不安を感じていた。

それでも、一度立ち止まってみたかった。

退職後、しばらくは何もしない日が続いた。

最初は自由な時間がうれしかった。

しかし、平日の昼間に一人でいると、社会から離れてしまったような気持ちになることもあった。

 そんなある日、以前の同僚から連絡が入った。

「新しい職場で業務の見直しをしているんだけど、少し相談に乗ってもらえない?」

麻衣は久しぶりに、仕事の話に夢中になった。

業務の流れを整理し、改善できそうな部分を一緒に考える。

 数日後、同僚から連絡があった。

「ありがとう。すごく助かったよ。」

その言葉を聞いて、麻衣は気づいた。

会社を辞めたからといって、これまでの経験までなくなったわけではない。

自分には、十五年間で身につけた知識や力がある。

それを、これからどんな形で生かすかは、自分で考えていいのだ。

 その後、麻衣は短時間の仕事を探しながら、業務改善の支援についても学び始めた。

収入は以前より少なくなるかもしれない。

将来の見通しも、まだはっきりしていない。

それでも、働く時間や場所を自分で考えられることに、新しい可能性を感じていた。

 カフェを出ると、秋の風が頬をなでた。

正社員を辞めて、何かを失ったのかもしれない。

でも、それだけではなかった。

これまでの経験を、これからの人生にどう生かすか。

その問いと向き合う時間を、麻衣は手に入れていた。


#正社員を辞める
#働き方の選択
#新しい人生 

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 「本当に、辞めてしまって良かったのかな。」 平日の午前十時。 カフェの窓際でコーヒーを飲みながら、麻衣はそんなことを考えていた。 三十八歳。 十五年間勤めた会社を、三か月前に退職した。  大学を卒業してから、ずっと正社員として働いてきた。 営業事務から始まり、後輩の指導や部署の...