2025年12月6日土曜日

就活物語「静かな情熱を持つ子」

――派手さはないが、言葉の端々に熱意が滲む――


 面接室に入ってきた瞬間、彼は特別目立つわけではなかった。

声は小さめ、動作も控えめ。

“おとなしいタイプかな”というのが第一印象だった。

 だが、話し始めると、その印象は少しずつ変わっていった。

 「大学ではロボット研究会に所属していました。

ただ、技術はまだ追いついていません。でも――」

 彼は一度言葉を切り、まっすぐこちらを見た。

 「完成させる瞬間より、できるようになるまでの過程がすごく好きなんです。」

 その一言に、静かな熱が宿っていた。

声は大きくないのに、言葉に芯がある。

自分の好きなことを、飾らず、自然体で語る姿に、私は思わず身を乗り出した。

 さらに、彼はロボットの設計ミスで徹夜したエピソードも語った。

苦労話を自慢げに語るのではなく、

「うまくいかない時間も悪くなかったです」

と、少し笑いながら話すその姿が印象的だった。

 派手な表現も、大きなアピールもない。

それでも、言葉の端々に滲む“ものづくりへの愛情”がしっかりと伝わってきた。

 面接が終わったあと、同席していた女性主任が言った。

「静かなんだけど、すごくいい子ね。ああいう子は伸びるよ。」

 情熱とは、声の大きさでは測れない。

目立たなくても、心の奥で燃やし続けている熱がある。

その熱は、確かな成長につながる――そう確信した面接だった。


#面接官の視点
#静かな情熱
#成長する人 

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