2025年12月7日日曜日

就活物語「聞く姿勢が圧倒的にいい学生」

――話の受け止め方・うなずきの誠実さ――


 面接では「どれだけ話せるか」に目が向きがちだ。

だが、長く面接官をしていると、

“話す力”よりも“聞く力”にその人の本質が表れることがある。

 その学生も、最初は特別目立つタイプではなかった。

自己紹介も短く、語り口も穏やかで控えめ。

だがこちらが質問を投げかけた瞬間、印象が変わった。

 彼は、言葉を遮らず、真っすぐこちらの目を見て聞いていた。

うなずきのタイミングが自然で、相手の言葉を大事に扱っているのが伝わってくる。

 「この職種で大切だと思うことは?」

そう尋ねると、少し考えてから、

「まず“理解する姿勢”だと思います。

自分の意見を言う前に、相手の言葉を受け止めたいです。」

 その答えは、正解を探したものではなく、

彼の日常の価値観から出てきた“自分の言葉”だった。

 さらに、逆質問の時間になると、

彼は一つひとつの返答に丁寧にうなずきながら、

「それはどういう背景があるんですか?」

「そのときのチームの雰囲気はどうでしたか?」

と、本質に近づく質問を重ねた。

 面接が終わったあと、同席していた部長が言った。

「聞く姿勢があれだけいいと、一緒に働きやすいね。」

 聞くことは、話すよりも難しい。

意見を急がず、相手の言葉を受け止めてから返す姿勢は、

組織に入ってから大きな力になる。

 ――誠実な“聞く力”は、その人の人柄を映す鏡だ。

彼のうなずきには、その鏡に映る温かさがあった。


#面接官の視点
#聞く力
#誠実な姿勢 

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