――話の受け止め方・うなずきの誠実さ――
面接では「どれだけ話せるか」に目が向きがちだ。
だが、長く面接官をしていると、
“話す力”よりも“聞く力”にその人の本質が表れることがある。
その学生も、最初は特別目立つタイプではなかった。
自己紹介も短く、語り口も穏やかで控えめ。
だがこちらが質問を投げかけた瞬間、印象が変わった。
彼は、言葉を遮らず、真っすぐこちらの目を見て聞いていた。
うなずきのタイミングが自然で、相手の言葉を大事に扱っているのが伝わってくる。
「この職種で大切だと思うことは?」
そう尋ねると、少し考えてから、
「まず“理解する姿勢”だと思います。
自分の意見を言う前に、相手の言葉を受け止めたいです。」
その答えは、正解を探したものではなく、
彼の日常の価値観から出てきた“自分の言葉”だった。
さらに、逆質問の時間になると、
彼は一つひとつの返答に丁寧にうなずきながら、
「それはどういう背景があるんですか?」
「そのときのチームの雰囲気はどうでしたか?」
と、本質に近づく質問を重ねた。
面接が終わったあと、同席していた部長が言った。
「聞く姿勢があれだけいいと、一緒に働きやすいね。」
聞くことは、話すよりも難しい。
意見を急がず、相手の言葉を受け止めてから返す姿勢は、
組織に入ってから大きな力になる。
――誠実な“聞く力”は、その人の人柄を映す鏡だ。
彼のうなずきには、その鏡に映る温かさがあった。
#面接官の視点
#聞く力
#誠実な姿勢

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