2026年10月24日土曜日

それぞれの、働く理由|育児と仕事|子どもが生まれて、働く理由が変わった日


 「お父さんになったんだね。」

病室で、生まれたばかりの娘を抱いたとき、妻がそう言って笑った。

翔平は三十二歳。

住宅設備メーカーの営業職として働いている。

これまでは、仕事で成果を出すことが何より大切だった。

営業成績を上げたい。

昇進したい。

もっと収入を増やしたい。

そのためなら、多少の残業も休日出勤も仕方がないと思っていた。

 けれど、娘が生まれてから、少しずつ気持ちが変わり始めた。

仕事を終えて帰宅すると、小さな寝息を立てる娘がいる。

妻は慣れない育児に追われ、疲れた表情を見せることもあった。

「今日も遅くなって、ごめん。」

そう言うと、妻は笑顔で答えた。

「大丈夫。でも、少しだけ一緒にいてくれるとうれしいな。」

その言葉が、胸に残った。

 ある日、上司から新しい大型案件の担当を打診された。

以前なら迷わず引き受けていただろう。

しかし今回は、すぐに返事ができなかった。

仕事で認められたい気持ちは変わらない。

でも、娘の成長も見守りたい。

妻と一緒に子育てをしたい。

どちらも、自分にとって大切なことだった。

 翌日、翔平は上司に相談した。

「挑戦したいです。ただ、家庭との時間も大切にしたいので、仕事の進め方を相談させてください。」

上司は少し考えてから言った。

「分かった。チームで進められる方法を考えよう。」

もちろん、すべてが思いどおりになるわけではない。

忙しい日は続くだろう。

それでも、自分の希望を伝えたことで、少し前に進めた気がした。

 その夜、娘を抱きながら、翔平はふと思った。

以前は、自分の成功のために働いていた。

今は、守りたい家族がいる。

でも、それだけではない。

家族と過ごす時間を大切にしながら、自分自身も成長していきたい。

 働く理由は、一つではなくなった。

娘の小さな手が、翔平の指をぎゅっと握った。

その温かさを感じながら、これからの働き方を少しずつ考えていこうと思った。


#育児と仕事の両立
#働く理由
#家族との時間 

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