――面接用の言葉ではなく、自分の言葉で話した真実味――
面接をしていると、耳に馴染んだ言葉がよく飛び交う。
「御社の理念に共感しました」「チームワークが得意です」――
もちろん悪いわけではないが、どうしても“面接用”の響きが残る。
その日の学生も、最初は同じような自己紹介だった。
だが、ある質問をきっかけに空気が変わった。
「就職活動をしていて、正直しんどかったことはありますか?」
この問いに、彼は一瞬だけ迷った表情を見せ、
そのあと、深く息を吸って話し始めた。
「正直に言うと……“自分には何もないんじゃないか”と思ったことがありました。
周りの友達が次々と内定をもらって、焦って、比べて、落ち込んで。
でも、そんなときに指導教員が“できない自分も含めて受け入れろ”と言ってくれて……
そこから少しずつ、“見せたい自分”じゃなくて“等身大の自分”で話せるようになりました。」
その言葉は飾らず、まわりくどくもなく、
まっすぐ胸に届いた。
面接官としてではなく、一人の大人として、
「ああ、この子は強いな」と思った。
うまく話そうという意図が消えたとき、
人の言葉は驚くほど力を持つ。
本音は、不器用でも、聞く人の心に深く残る。
面接後、同席していた部長が静かに言った。
「素直に弱さを見せられるのは、誠実さの証拠だね。」
――面接とは、飾る場ではなく、自分を“開く”場でもある。
そのことを、この学生があらためて思い出させてくれた。
#面接官の視点
#本音で語る
#誠実さ





























