【第1話】下書きフォルダの秘密
遥のパソコンの中には「エントリーシート(下書き)」というフォルダがある。中を開くと、ファイル名に「第一志望」「提出用」「書きかけ」「没」など、いろんな名札がついていた。
「また途中で止まっちゃった……」
書いては悩み、削除して、また書く。その繰り返し。誰にも見せていないのに、なぜか評価される気がして、怖くなる。
でも、ある日ふと気づいた。たくさんの“途中”があることは、それだけ“考えた”証なのだと。誰かの真似でもなく、AIの言葉でもない、自分の中から絞り出した言葉たち。
遥は画面を開いた。「完成させなきゃ」と力むのをやめて、今日も新しい下書きを作る。まだ提出しない。でも、それでも前に進んでいるのだ。
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