【第2話】文字数が埋まらない
「400文字以上800文字以内で」と書かれたエントリーシートの設問に、翔太はうんざりしていた。言いたいことはある。でも、それを“就活っぽい言葉”にするのが難しい。
最初は、ありきたりな志望動機を真似してみた。「御社の企業理念に共感し……」と打っては消し、何度も繰り返した。気づけば、何も進んでいない。
でもふと、自分がバイト先でどんなことを工夫してきたか、後輩に何を伝えてきたかを思い出したとき、キーボードの手が止まらなくなった。
「就活っぽく書こう」とするほど、自分から遠ざかっていたのだ。
800文字の最後にたどり着いたとき、翔太は気づいた。言葉は、飾るより、届かせるものだと。
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