2025年7月30日水曜日

就活におけるグループワーク)【第46話】「沈黙の勇気」

【第46話】「沈黙の勇気」


 「じゃあ、次はアイデア出しに入ろうか」リーダーの真紀が言うと、場に静寂が落ちた。誰もが何か言わなきゃと思っているのに、言葉が出てこない。

 そんな中、黙っていた遥が、意を決したようにノートを開いた。「あの……こんな案、どうですか?」その声は小さかったが、明確だった。視線が一斉に彼女に集まり、空気が動く。

 「それ、面白い!」と誰かが言い、他のメンバーも次々に意見を乗せていく。沈黙を破った一言が、アイデアの連鎖を生んだ瞬間だった。

 グループワークにおいて、大きな声や派手な発言だけが価値ではない。静けさの中にある“思い切り”もまた、チームを動かす力になる。 

就活におけるグループワーク)【第45話】「頼る」ことが強さになる

【第45話】「頼る」ことが強さになる


 プレゼン準備の締切が迫る中、真由は作業の遅れに焦っていた。

「自分の担当だから」と黙々と一人で抱え込み、夜遅くまで資料とにらめっこ。

そんな様子に気づいたのは、いつも穏やかな彩花だった。

「無理しないで。手伝えることあるよ」と声をかけられ、思わず涙ぐむ真由。

「ありがとう……」と絞り出すように答えたとき、不思議と肩の荷が軽くなった気がした。

 人に頼ることは、甘えじゃない。

仲間を信じること、助けを求めることもまた、大切なチームの力だと気づけた一日だった。 

2025年7月29日火曜日

就活におけるグループワーク)【第44話】「ひとこと」が変える空気

【第44話】「ひとこと」が変える空気


 グループワークでの議論が白熱しすぎて、場の空気がピリついてきたときだった。

静まり返る一瞬、慎太郎がふっと笑って「でも、なんか、学生のうちにこんなに真剣に話し合えるって貴重だな」とぽつり。

その言葉に皆が一瞬驚き、そしてふわっと笑顔になった。

「そうだね」「確かに」と、場の雰囲気が一気にやわらぎ、議論は建設的な方向へと動き出す。

 感情が行き過ぎそうになる場面で、ふとした「ひとこと」が状況を変えることがある。

誰かが空気をやわらかくできる、それだけでチームはまた前を向ける。

それを体感した一日だった。

就活におけるグループワーク)【第43話】いつも黙っていた彼が

【第43話】いつも黙っていた彼が


 グループワークも終盤に差し掛かったある日。

発表準備が進む中で、いつも口数の少なかった柏木くんが、ふと手を挙げた。

「…僕、実はこんな資料を作ってたんだけど…」

彼がそっと出した資料には、私たちの議論の流れや、他のチームとの差別化のポイントが丁寧にまとめられていた。

 驚きと同時に、チーム全員の表情が変わった。

「すごい…なんで今まで言わなかったの?」

「いや、みんなが一生懸命だったから…水を差しちゃいけないかと思って…」

 その日から、柏木くんは発言が増えた。

きっと、あの一歩が彼の中の扉を開いたのだろう。

グループワークは、誰かの「変わるきっかけ」にもなる――そう感じた一日だった。 

2025年7月28日月曜日

就活におけるグループワーク)【第42話】議論を止めた沈黙

【第42話】議論を止めた沈黙


 グループ内での話し合いが白熱していた。誰もが自分の意見を押し通そうとして、声が重なり合う。

そんな中、空気がピタリと止まった。

普段あまり発言しない南が、唐突に手を挙げたのだ。

 「ちょっと、いいですか」と、静かに言葉を選びながら話し始める南。

「どの案が正しいとかじゃなくて、今、誰かの意見を否定するような空気になっていませんか?」

その一言に、一同は黙り込む。誰もが、自分が少し熱くなっていたことに気づいたのだ。

 沈黙のあと、「ごめん」と誰かが口にした。空気がやわらぎ、南の一言が議論を進めるための“場”を整えてくれた。 

就活におけるグループワーク)【第41話】置いてけぼりの声が聞こえた

【第41話】置いてけぼりの声が聞こえた


 グループワークも終盤、発表内容の整理が進む中、椎名はふと、静かに俯く佳奈の様子に気づいた。

「何か意見ある?」と声をかけると、佳奈は小さく首を振った。けれど、目は何かを言いたそうに揺れていた。

「実は…」と、ようやく言葉をこぼした佳奈は、最初のアイデア段階で提案した自分の意見が、そのまま誰かの案として採用されていることに、少しだけ引っかかっていたのだった。

 「言ってくれてよかった」と椎名は返す。話し合いの場に戻ったとき、彼は皆に向かって「最初のアイデアの出どころ、覚えてる?」と問いかけた。

その一言で空気が変わり、佳奈の目にほんの少し光が戻った。 

2025年7月27日日曜日

就活物語「留学経験よりも光った“現地の気づき”」

就活物語
「留学経験よりも光った“現地の気づき”」


 「留学って、就活で本当に評価されるんですか?」

そう相談に来たのは、国際系の学部に通うミサキさん。3年次に半年間、ヨーロッパに留学していたという。

 「正直、英語力に自信はないし…周りにも帰国子女とか多いので、あまり話す意味があるのかと」

 だが、私は留学そのものではなく、「どんな経験をし、何を感じたか」を聞いてみた。

 彼女は少し考えてから話し始めた。現地の学生とのグループワークで、納期に対する意識の違いや、議論の進め方の多様性に驚いたこと。最初は戸惑いながらも、徐々に相手の文化や意見を尊重する姿勢を学んでいったこと。

 「“正しさ”って一つじゃないんだって、すごく実感しました」

 その言葉に、私はハッとした。語学力以上に、グローバルな視野と対話力こそ、今の社会に必要な力だと感じた。

 企業の国際部門とのマッチング面談後、「ぜひ会ってみたい」と言われたとき、私は心の中でうなずいた。 

就活におけるグループワーク)【第46話】「沈黙の勇気」

【第46話】「沈黙の勇気」  「じゃあ、次はアイデア出しに入ろうか」リーダーの真紀が言うと、場に静寂が落ちた。誰もが何か言わなきゃと思っているのに、言葉が出てこない。  そんな中、黙っていた遥が、意を決したようにノートを開いた。「あの……こんな案、どうですか?」その声は小さかった...