――判断が揺れた、その理由――
その学生は、終始穏やかだった。
相手の話をよく聞き、うなずき、否定的な言葉を使わない。
チームでの経験を語る場面では、
「みんなで」「周囲と相談して」「意見をすり合わせて」
そんな言葉が自然に並んだ。
評価は高かった。
「協調性がある」「トラブルを起こしにくそう」「組織向き」
どれも現場では重要な資質だ。
だが、面接後の議論で、ある問いが浮かび上がった。
「この人自身は、どう考えているのだろうか?」
意見が対立したとき、自分はどう動いたのか。
納得できない場面で、どう折り合いをつけたのか。
そうした質問を重ねても、答えは常に“全体”に向かっていた。
個人としての葛藤や判断が、最後まで見えなかった。
比較された学生は、協調性では劣っていたかもしれない。
だが、自分の意見を持ち、衝突し、調整した経験を率直に語っていた。
その「個」が、わずかに評価を上回った。
結果は不採用。
ただ、「チームに入れば、間違いなく信頼される存在になる」という声も多かった。
協調性は、大きな強みだ。
だが、組織の中では、
“個としての軸”と結びついたとき、さらに力を発揮する。
私たちは、その軸を見極めきれず、最後まで迷っていた。
#面接官の視点
#協調性の評価
#個の見えにくさ

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