2025年12月28日日曜日

就活物語「強みは明確、不安も明確だった学生」

――評価が割れた、その境目――


 その学生の強みは、最初からはっきりしていた。

論理的で、説明も簡潔。質問に対しても要点を外さず、理解力の高さは誰もが認めていた。

「頭の回転が速い」「即戦力になりそうだ」

評価シートには、そんな言葉が並んでいた。

 一方で、別の意見も出ていた。

「言葉は正しいけれど、感情が見えにくい」

「一緒に悩んだり、壁にぶつかったときの姿が想像しづらい」

 面接中、彼は終始落ち着いていた。

失敗談も、成功談も、きれいに整理されている。

だがその分、どこか“完成しすぎている”印象が残った。

 議論の焦点は、「成長の余白が見えるかどうか」だった。

能力は申し分ない。

ただ、現場では正解のない課題や、人との摩擦に向き合う場面も多い。

そのとき、彼はどう動くのだろうか――そこが最後まで見えなかった。

 最終的に、合否を分けたのは、別の学生が見せた“不器用さ”だった。

未整理でも、自分の弱さを言葉にしようとする姿勢。

そこに、育てていける可能性を感じたという意見が、わずかに上回った。

 結果は不採用。

だが、「能力だけなら文句はない」という言葉が、全員の共通認識だった。

 面接では、強みがはっきりしていることが必ずしも有利とは限らない。

ときに、不安や未完成さが、“伸びしろ”として評価されることもある。

その微妙な境目に、私たちは確かに迷っていた。


#面接官の視点
#評価が割れた理由
#伸びしろ 

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就活物語「強みは明確、不安も明確だった学生」

――評価が割れた、その境目――  その学生の強みは、最初からはっきりしていた。 論理的で、説明も簡潔。質問に対しても要点を外さず、理解力の高さは誰もが認めていた。 「頭の回転が速い」「即戦力になりそうだ」 評価シートには、そんな言葉が並んでいた。  一方で、別の意見も出ていた。 ...