――合否が割れた、その理由――
その学生の評価は、面接が終わった直後から割れていた。
受け答えは論理的で、質問の意図も正確に捉えている。準備不足は感じられず、むしろ優秀だという意見も多かった。
一方で、「無難すぎる」「安全な答えに終始している」という声もあがった。
私はメモを見返しながら考えた。
彼は失敗の話も、学びの話も、きちんと整理して話していた。だが、その言葉のどこにも“揺れ”がなかった。
良く言えば安定感、悪く言えば踏み込まなさ。
最終的に議論になったのは、能力ではなく「一緒に働く姿が想像できるか」だった。
同じレベルの評価が並ぶ中で、別の学生が見せた“未完成でも前に出ようとする姿勢”が、わずかに上回った。
結論は不採用。
だが、誰も彼を否定してはいなかった。
「別の環境なら、結果は違ったかもしれない」
そう全員が口にした。
面接の結果は、時に残酷だ。
けれど、迷われたという事実は、確かに評価されていた証でもある。
#面接官の視点
#合否が割れた理由
#わずかな差

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