【第28話】「なんとなく」で書いた志望動機
「御社の企業理念に共感し……」
そんな書き出しで始めた志望動機。ネットの例文を見て、それっぽく整えたつもりだった。
でも、読み返すたびに胸の奥がざわつく。
本当にそう思ってる? なぜこの会社に惹かれたの?
心の中で何度も問い返すうちに、ふと大学2年のときに参加したインターンを思い出した。
そこで出会った社員がかけてくれた一言が、どれだけ励みになったか。
その会社の名前が、今書いている履歴書と一致していた。
「そうだ。あの人のように働きたいって、あの時思ったんだった」
ようやく言葉が自分の内側から湧き出した。
“なんとなく”ではなく、“自分の言葉”で書く志望動機。
里緒はゆっくりとキーボードに向かった。
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