【第26話】書く前に手が止まる
パソコンの前に座ったものの、カーソルが点滅したまま、まったく進まない。
「書き出しは、何から始めればいいんだろう」
文字ひとつ打たないまま、10分が過ぎていた。
エントリーシート。書くべきことはわかっているつもりだった。
でも、頭の中が真っ白になる。何も書けない自分に、少し焦り始める。
そんなとき、机の横に貼っていた小さなメモが目に入った。
《まずは思い出す。書くのはあとで》――就活ノートに自分で書いた言葉だった。
優花は、ノートを開いて過去のアルバイトやサークルでの出来事を、箇条書きにしはじめた。書き出す前に、思い出すこと。それが、いちばん最初の一歩だった。
0 件のコメント:
コメントを投稿