【第1話】「何も言えなかった、あの日の自分へ」
「では、5人で10分間、自由に話し合ってください」
そう言われた瞬間、空気がぴんと張り詰めた。自己紹介が終わると、隣の斉藤がすぐに話し始め、他のメンバーも次々と意見を出す。
私は、口を開くタイミングを探し続けた。でも、気づけば話はどんどん進んでいき、最後まで一言も発せずに終わった。
グループワークの帰り道、悔しさと情けなさで足取りが重くなった。家に着いて、メモ帳に今日のことを書き出してみた。誰も私を遮っていなかった。発言しようと思えば、できたはずだった。
「次は、ひとつだけでも言おう」
そう決めた私は、ノートに「言いたかったこと」を箇条書きにして、翌週のグループワークに備えた。
怖くても、準備していれば、きっと声は出せる。そう信じた、あの日の始まり。
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