【第2話】話すことが得意じゃなくても
「進行役、誰かやりますか?」
その一言で、場が静まり返った。誰もが様子をうかがい合うなか、内心「無理だ」と思いながらも、春菜はおそるおそる手を挙げた。
話すのは苦手だ。でも、黙って終わるのはもっとイヤだった。
「じゃあ、まず意見を出し合ってみましょうか」
声は少し震えていた。進行もぎこちなく、タイムキープもうまくいかなかった。
だけど、不思議と皆が春菜のペースに合わせてくれた。話しやすい雰囲気を作ってくれて、気づけば自然に議論が進んでいた。
終わったあと、隣の子が笑って言った。
「やりやすかったよ。ありがとう」
話すのが得意じゃなくても、場を動かす力はある。そう思えた最初の一歩だった。
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