就活物語
「見えない仕事に気づける子」
インターンの最終週、資料作成に追われていた私は、会議室の準備をすっかり忘れていた。開始5分前、慌てて会場に向かうと、すでに机が整えられ、プロジェクターの接続も済んでいた。
準備をしていたのは、リョウくんだった。声をかけると「たまたま近くにいて、誰も準備していなかったので」と笑っていたが、私は見ていた。彼はその日、同じ会議室で別の打ち合わせをしていて、終わると同時にサッと動いたのだ。
誰にも言われていないことに気づき、動ける学生は少ない。「気が利く」とは、よく使われる言葉だけど、その本質は“周囲を見て、今必要なことを察する力”だと私は思う。
インターン中も、ファイル整理やごみの片付けなど、誰も頼んでいない雑務を彼は自然にこなしていた。それを見ていた社員たちは、口をそろえてこう言った。「リョウくん、気持ちいい働き方をするね。」
仕事は派手さだけじゃない。見えない仕事に気づける、その姿勢が、職場の信頼を築いていくのだ。
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