【第7話】「それ、さっきも言ってたよ」
「つまり、まとめると──」
慎也が話し出した瞬間、隣の葵がぽつりと言った。
「それ、さっきも言ってたよ」
空気が一瞬、凍った。
慎也の手が止まり、視線が泳ぐ。メンバーの誰かが、空のペットボトルを指でカラカラと転がした。
でも葵は続けた。「でも、そこ大事ってことだよね。何回も出てくるってことは」
その一言で、空気がやわらいだ。慎也もうなずき、「じゃあ、その点を軸にしてまとめようか」と笑った。
グループワークでは、つい自分の発言に必死になる。でも、誰かの声を受け止める力が、場の流れを変えていく。
葵の“ツンデレ的フォロー”が、チームに小さな安心を生んだ。
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