2025年7月3日木曜日

就活におけるグループワーク)【第7話】「それ、さっきも言ってたよ」

【第7話】「それ、さっきも言ってたよ」


 「つまり、まとめると──」

 慎也が話し出した瞬間、隣の葵がぽつりと言った。

 「それ、さっきも言ってたよ」

 空気が一瞬、凍った。

 慎也の手が止まり、視線が泳ぐ。メンバーの誰かが、空のペットボトルを指でカラカラと転がした。

 でも葵は続けた。「でも、そこ大事ってことだよね。何回も出てくるってことは」

 その一言で、空気がやわらいだ。慎也もうなずき、「じゃあ、その点を軸にしてまとめようか」と笑った。

 グループワークでは、つい自分の発言に必死になる。でも、誰かの声を受け止める力が、場の流れを変えていく。

 葵の“ツンデレ的フォロー”が、チームに小さな安心を生んだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

就活物語「ボランティア経験が就活で光った瞬間」

就活物語 「ボランティア経験が就活で光った瞬間」  キャリアセンターにやってきた四年生のハルト君。自己PRについて相談を受けたとき、最初は「特に目立った経験はありません」と言っていた。  ところが、雑談の中で「地域の清掃ボランティアを2年間続けている」と口にした瞬間、私は耳を傾け...