【第43話】いつも黙っていた彼が
グループワークも終盤に差し掛かったある日。
発表準備が進む中で、いつも口数の少なかった柏木くんが、ふと手を挙げた。
「…僕、実はこんな資料を作ってたんだけど…」
彼がそっと出した資料には、私たちの議論の流れや、他のチームとの差別化のポイントが丁寧にまとめられていた。
驚きと同時に、チーム全員の表情が変わった。
「すごい…なんで今まで言わなかったの?」
「いや、みんなが一生懸命だったから…水を差しちゃいけないかと思って…」
その日から、柏木くんは発言が増えた。
きっと、あの一歩が彼の中の扉を開いたのだろう。
グループワークは、誰かの「変わるきっかけ」にもなる――そう感じた一日だった。
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