【第41話】置いてけぼりの声が聞こえた
グループワークも終盤、発表内容の整理が進む中、椎名はふと、静かに俯く佳奈の様子に気づいた。
「何か意見ある?」と声をかけると、佳奈は小さく首を振った。けれど、目は何かを言いたそうに揺れていた。
「実は…」と、ようやく言葉をこぼした佳奈は、最初のアイデア段階で提案した自分の意見が、そのまま誰かの案として採用されていることに、少しだけ引っかかっていたのだった。
「言ってくれてよかった」と椎名は返す。話し合いの場に戻ったとき、彼は皆に向かって「最初のアイデアの出どころ、覚えてる?」と問いかけた。
その一言で空気が変わり、佳奈の目にほんの少し光が戻った。
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