【第32話】“進行役”の苦しみは、孤独の中にある
「じゃあ、まずは意見出しから始めましょう」
そう言って、グループワークを進めていたのは進行役の大樹。
だが、発言は少なく、沈黙が続く。
「どう思いますか?」と水を向けても、「うーん…」と目を伏せられる。
誰も答えてくれない時間が、やけに長く感じられた。
内心、「なんで誰も話してくれないんだよ…」と叫びたかった。
けれど、次の瞬間、隣の紗耶がそっと言った。
「進めてくれてありがとう。大変だよね。でも、助かってる」
その言葉に、大樹の背中が少しだけ伸びた。
進行役は、決して“指示を出す人”ではない。
誰よりも“迷いながら支える人”だ。
その苦労に気づき、声をかけ合えるチームでありたい。
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