【第28話】沈黙は、無言の“肯定”かもしれない
グループワークが始まって20分。隣の席の綾音は、ほとんど話していなかった。
意見を求めても「うーん、まだちょっと…」と首を傾げる。
リーダー役の慧は少し焦っていた。
でも、ふと綾音のメモを見ると、話された意見を丁寧に整理し、矢印や囲みで視覚化していた。
「それ、すごく分かりやすいね」と慧が声をかけると、綾音は恥ずかしそうに笑った。
「話すの苦手で…でも、聞いてはいます」
そのあと、綾音は「この意見とこの意見、つながりませんか?」と初めて言葉を発した。
それは、場を前進させる一手だった。
話さない人が“何もしていない”とは限らない。
沈黙の裏にも、熱心な参加があることを忘れてはいけない。
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