【第18話】うまく話せなかったけど、伝わった
話す順番が回ってくるのが怖かった。
楓は、グループワークでうまく話せた試しがなかった。声が小さくなり、言いたいことの半分も言えずに終わることが多かった。
今回もそうだった。途中で言葉に詰まり、「あ、すみません」と目を伏せて終えてしまった。
ところが──
「さっきの話、もっと詳しく聞きたいです」と言ったのは、隣にいた咲人だった。
「表現がすごくリアルだったから、逆に印象に残った」
そのひとことで、胸がじんわりとあたたかくなった。
話すのが得意じゃなくても、心から出た言葉は、ちゃんと誰かに届いている。
グループワークで大切なのは、上手さじゃなく、“まっすぐさ”なのかもしれない。
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