【第15話】「何もしてない」は、本当に何もしてないのか?
「ごめん、私…今日は何もできなかった気がする」
グループワークが終わったあと、静かにつぶやいたのは遥だった。
たしかに、リーダーをしたわけでもない。発表を担当したわけでもない。
でも、周囲の誰かが詰まりかけたとき、遥はさりげなくペンを差し出し、メモを取って渡し、水を取ってあげていた。
空気が張りつめた瞬間には「まあまあ」と笑って場をやわらげていた。
それに気づいたメンバーのひとりが、帰り際に言った。
「遥ちゃん、今日めちゃくちゃ助かったよ。いないとまとまらなかったと思う」
「何もしてない」なんてことは、きっとない。誰かの見えない働きが、チームをちゃんと動かしている。
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