【第13話】沈黙の3分間
「それでは、これからグループで自由に議論してください」
司会の合図で始まったはずの話し合い。だが、開始早々、テーブルを囲む4人の間に沈黙が流れた。
誰かが話すのを待っている。でも誰も、最初の一言を発さない。
1分、2分、時間だけが過ぎていく。焦りと不安が胸を締めつける。
──そのとき。
「……この沈黙、もったいないよね」
小さな笑みとともに、拓海がつぶやいた。場がふっと緩み、空気が動き出す。
「たしかに。じゃあ、何から話す?」
笑いが起き、話題が生まれ、ようやく議論が始まった。
沈黙は怖い。でも、それを破るのは、大きな声や立派な意見じゃなくて、たったひとことの“本音”だったりする。
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