【第11話】その“うなずき”が、救いになる
「私は……その、あんまり自信ないんですけど──」
緊張した面持ちで話し始めたのは、里奈だった。グループワークでようやく手を挙げたものの、声が小さくて自分でも聞き取れないほどだった。
そのとき、対面にいた光一が、うなずきながらじっと彼女を見ていた。
口を挟まず、相づちもせず、ただ「聞いている」というサインを送り続けてくれた。
その安心感に背中を押されるように、里奈の声は徐々に大きく、そして言葉がしっかりしていった。
発言が終わると、光一が「なるほど、それ面白いですね」と、自然に話をつなげた。
聞くことは、立派な参加だ。その姿勢が、誰かの勇気を支えている。
グループワークは、話すだけの場じゃない。聞く力が、チームの空気をつくるのだ。
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