2025年6月21日土曜日

就活物語「空気を変える力」

就活物語
「空気を変える力」


 今回のインターンシップで、最も印象に残ったのはユウトだった。

 彼は特別にプレゼンが上手かったわけでも、知識が抜きん出ていたわけでもない。ただ、一つだけ違ったのは「場の空気を変える力」を持っていたことだ。

 グループワーク初日、どこかぎこちない空気のなかで彼は「せっかくだし、最初に自己紹介しません?」と声をかけた。おかげでその場は一気に和み、参加者たちも少しずつ会話が生まれた。あれがなければ、そのチームは最後まで沈黙のままだったかもしれない。

 ワークの途中でも、誰かのアイデアに「それ、いいですね」と必ず肯定から入る。間違った意見でも、批判はせずに視点を足して広げていた。ユウトがいるだけで、チームが前向きになるのを私は何度も目にした。

 成果発表の後、他の学生たちが席に戻るなか、ユウトは最後まで会場の片付けを手伝っていた。その背中を見ながら、私はこう思った。

 「一緒に働くなら、こういう人がいい」

 スキルはあとから身につければいい。でも、人を前向きにする力は、簡単には身につかない。ユウトはそれを、自然体でやってのけていた。

0 件のコメント:

コメントを投稿

現場の学び「学生の質問が仕事を止めるとき」

 忙しい現場で、学生に声をかけられた。 「この作業、どうしてこの順番なんですか?」  一瞬、手が止まる。 考えたこともなかった問いだった。  説明しながら、自分の中の“当たり前”を見直す。 無駄な工程や、改善できそうな点にも気づいた。  学生の質問は、現場を止める。 でもそれは、...