【第5話】履歴書を手書きにする理由
「履歴書って、やっぱり手書きの方がいいんですか?」
そう誰かに聞いたわけじゃないけれど、直樹はパソコンで作ったものと、手書きの用紙を交互に見比べていた。
文字が歪むのが嫌で、何度も下書きをしては書き直す。自分の文字に自信はない。でも、手で書いた文字には、自分の“気配”がにじんでいる気がした。
「これが僕の文字です」
そう言えるのは、ちょっと恥ずかしい。でも、その恥ずかしさこそが、自分のリアルなのかもしれない。
丁寧に、ゆっくりと、1文字ずつ書いていく。文字に込めた時間と気持ちが、画面越しでは届かない何かを伝えてくれるような気がした。
そうして書き終えた履歴書には、直樹自身がちゃんと映っていた。
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