【第33話】「完璧な一文が書けた日のこと」
「これは…いいかも」
書いたばかりの自己PR文を見て、蓮は小さくうなずいた。
はじめは全然うまくいかなかった。「こんなのアピールにならない」「誰でも言いそう」と何度も消しては書き直した。
でも、ある時気づいた。「かっこよく」書こうとするほど、嘘っぽくなる。自分の弱さやつまずいた経験も、ちゃんと書いていいんじゃないかと。
そうして出来上がったのが、「失敗して落ち込んだけど、そこから立ち直るまでに何をしたか」を素直に綴った一文だった。
書けた瞬間、なんだか泣きそうになった。ようやく自分を、言葉にできた気がして。
エントリーシートは、完璧な自分を飾る場所じゃない。今の自分を見つめて伝えるための紙なのだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿