【第32話】「誤字脱字がこわくて」
「もう5回は見直してるのに、まだ間違ってる気がする…」
麻衣はエントリーシートを握りしめたまま、動けずにいた。
「一字一句に責任を持つのが社会人ってこと?」そんなプレッシャーに押されて、言葉を修正するたびに自信も削られていく。
でも、ふと気づいた。最初に書いた文の方が、自分らしさがあった。丁寧に整えすぎて、言いたかったことがぼやけてしまっていた。
誤字脱字を直すことは大事。でも、それより大切なのは、自分の言葉で、自分の想いを届けること。
「よし。これでいこう」
麻衣は、最後にもう一度だけ読み返して、封筒にエントリーシートをそっと入れた。
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