【第10話】見返すたびに、ちがう顔
履歴書のファイルを見返すたびに、真理は不思議な気持ちになる。
最初に書いたもの、提出直前で手直ししたもの、うまく書けた気がするもの――全部、自分の文字なのに、まるで違う人が書いたように見える。
「私って、どんな人なんだろう」
志望動機も、自己PRも、書くたびに少しずつ変わっていく。迷いながら、削りながら、言葉を重ねてきた。
それは、うまく飾るためじゃない。
本当に、自分を知るためだったのかもしれない。
今日もまた、履歴書のファイルを開く。
書きかけの行に手を添えながら、真理は思う。「今の自分なら、もう少し素直に書ける気がする」
0 件のコメント:
コメントを投稿