就活物語
「見ているのは、書類の外側」
人事を担当して七年目。応募書類、筆記試験、面接——どれも大切な選考材料だ。でも実のところ、それだけを見て採用を決めているわけではない。
たとえば、会社説明会の受付でのやりとり。ある学生は笑顔で名乗り、丁寧にお辞儀をした。別の学生は、スマホを見ながら無言で資料を受け取った。そういう“場のふるまい”は、思っている以上にその人らしさを映す。
質疑応答の時間も同じだ。質問をする内容で、事前に企業研究をしているか、何に関心を持っているのかが透けて見える。メモの取り方や頷きのタイミングにも、話を“聴いている”か“流している”かが表れる。
さらに言えば、選考の連絡メール一つにも、その人の姿勢はにじむ。ある学生は、面接日時の案内に対し、すぐに丁寧な返信をくれた。別の学生は、締切ギリギリに一行だけの返信。面接当日の態度と見事に一致していた。
だから私たちは、選考の“外側”にも目を凝らす。
面接のときだけ“いい自分”を演じても、その前後のふるまいが本質を語る。社会に出れば、そうした一つひとつの積み重ねが信頼になるからだ。
採用とは、書類を見抜くのではなく、「人」を見抜くこと。
だから私は今日も、応募書類の外側に目を配る。
――この人と、一緒に働けるか。
その答えは、意外と何気ない瞬間に現れる。
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