――不採用通知を書きながら、手が止まった――
その学生の名前を、評価表から消すのに時間がかかった。
能力も、人柄も、申し分ない。
受け答えは誠実で、質問の意図も正確に汲み取っていた。
面接官の誰もが、「いい学生だ」と感じていた。
それでも、結果は不採用。
理由は、はっきりしているようで、実はとても曖昧だった。
今回は、別の学生の経験が、配属予定の部署に“より近かった”。
その差は、紙一枚ほどのわずかなものだった。
最終会議では、何度も名前が挙がった。
「この子を落としていいのか」
「将来性なら、むしろこちらではないか」
議論は尽きなかったが、採用枠は一つしかなかった。
決定後、静かな空気が流れた。
誰も彼を否定していない。
ただ、「今回は縁がなかった」としか言いようがなかった。
不採用通知の文面を整えながら、思う。
もし、もう一枠あったら。
もし、募集時期が少し違っていたら。
その“もし”が、頭から離れなかった。
面接は、優劣を決める場ではない。
限られた条件の中で、選ばざるを得ない場だ。
彼は、確かに惜しかった。
そしてその事実は、今も私の中に残っている。
#面接官の視点
#惜しかった学生
#採用枠の現実

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