2026年1月31日土曜日

就活物語「枠が、もう一つあればと思った学生」

――不採用通知を書きながら、手が止まった――


 その学生の名前を、評価表から消すのに時間がかかった。

能力も、人柄も、申し分ない。

受け答えは誠実で、質問の意図も正確に汲み取っていた。

面接官の誰もが、「いい学生だ」と感じていた。

 それでも、結果は不採用。

理由は、はっきりしているようで、実はとても曖昧だった。

今回は、別の学生の経験が、配属予定の部署に“より近かった”。

その差は、紙一枚ほどのわずかなものだった。

 最終会議では、何度も名前が挙がった。

「この子を落としていいのか」

「将来性なら、むしろこちらではないか」

議論は尽きなかったが、採用枠は一つしかなかった。

 決定後、静かな空気が流れた。

誰も彼を否定していない。

ただ、「今回は縁がなかった」としか言いようがなかった。

 不採用通知の文面を整えながら、思う。

もし、もう一枠あったら。

もし、募集時期が少し違っていたら。

その“もし”が、頭から離れなかった。

 面接は、優劣を決める場ではない。

限られた条件の中で、選ばざるを得ない場だ。

彼は、確かに惜しかった。

そしてその事実は、今も私の中に残っている。


#面接官の視点
#惜しかった学生
#採用枠の現実 

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