2026年1月25日日曜日

就活物語「最後の一言で、流れが変わった学生」

――判断が決まった、その瞬間――


 その学生の面接は、ここまでの議論でも評価が割れていた。

受け答えは誠実で、大きな失点もない。

一方で、強く印象に残る決め手も見当たらず、「可もなく不可もなく」という言葉が、何度も資料の上を行き交っていた。

 能力、経験、適性。

どの項目を見ても一定の水準は満たしている。

しかし、最終枠を託すには、あと一歩が足りない――

それが、多くの面接官の共通認識だった。

 面接終了を告げ、形式的なやり取りが終わったあと。

彼は席を立ち、出口に向かいながら、少しだけ足を止めた。

 「今日の面接で、自分の足りない点がはっきりしました。

もしご縁がなかったとしても、次に活かします。

貴重な時間を、本当にありがとうございました。」

 言葉は短く、飾り気もない。

だが、その声には覚悟があった。

評価を求めるための一言ではなく、自分の立ち位置を受け止めた上での言葉だった。

 ドアが閉まったあと、沈黙が流れた。

そして、誰かが静かに言った。

「この子、ちゃんと前を向いてるね。」

 最終的な結論は採用。

決め手になったのは、スキルでも実績でもない。

自分を見つめ、次に進もうとする姿勢だった。

 面接とは、完成度を測る場ではない。

変化し続けられるかどうかを、見極める場でもある。

そのことを、この学生が最後に教えてくれた。


#面接官の視点
#最後の一言
#判断の決め手 

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