――判断が決まった、その瞬間――
その学生の面接は、ここまでの議論でも評価が割れていた。
受け答えは誠実で、大きな失点もない。
一方で、強く印象に残る決め手も見当たらず、「可もなく不可もなく」という言葉が、何度も資料の上を行き交っていた。
能力、経験、適性。
どの項目を見ても一定の水準は満たしている。
しかし、最終枠を託すには、あと一歩が足りない――
それが、多くの面接官の共通認識だった。
面接終了を告げ、形式的なやり取りが終わったあと。
彼は席を立ち、出口に向かいながら、少しだけ足を止めた。
「今日の面接で、自分の足りない点がはっきりしました。
もしご縁がなかったとしても、次に活かします。
貴重な時間を、本当にありがとうございました。」
言葉は短く、飾り気もない。
だが、その声には覚悟があった。
評価を求めるための一言ではなく、自分の立ち位置を受け止めた上での言葉だった。
ドアが閉まったあと、沈黙が流れた。
そして、誰かが静かに言った。
「この子、ちゃんと前を向いてるね。」
最終的な結論は採用。
決め手になったのは、スキルでも実績でもない。
自分を見つめ、次に進もうとする姿勢だった。
面接とは、完成度を測る場ではない。
変化し続けられるかどうかを、見極める場でもある。
そのことを、この学生が最後に教えてくれた。
#面接官の視点
#最後の一言
#判断の決め手

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