就活物語
「言葉よりも行動が語る子」
面接が始まってまもなく、私はその学生の言葉よりも“姿勢”に目を奪われた。話すときは背筋が伸び、相手の目をしっかり見て、聞くときは少し前のめりになって相槌を打つ。言葉選びはまだぎこちないが、態度が真剣だった。
彼のエントリーシートには、派手な実績は書かれていない。「大学の食堂でアルバイトをしています」とだけあった。だが、彼はこう続けた。「毎日同じ作業ですが、“誰にとっても気持ちのいい空間”を作るように心がけています」
一見、何でもないような言葉だ。だが、その後の説明に私はハッとした。「お昼時はすごく混むので、行列の流れを見ながら声をかけたり、トレイを早めに片付けたりして、お客様が少しでもスムーズに動けるようにしていました。」
その姿が目に浮かぶようだった。彼は“指示されたことをやる”のではなく、自分で考えて動いていた。アルバイトという枠を超えて、働く意味をすでに掴んでいる。
面接の終盤、私はつい口にした。「あなたのような人が現場にいたら、チームが助かりますね。」 すると彼は少し照れたように笑いながら、「ありがとうございます。でも、まだまだ学ぶことばかりです」と答えた。
言葉よりも、行動が語る学生。それは、どんな企業にとっても貴重な存在だ。誠実な“姿勢”は、どんな立派な言葉よりも強く人の心に残る――。
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