【第15話】「部活の実績」がない不安
「部活とか、特にやってなかったんですよね……」
陽斗はそう言いながら、履歴書の“学生時代に力を入れたこと”の欄を見つめていた。
友達の多くは、部活での全国大会、留学経験、起業活動――キラキラしたエピソードを並べている。自分は、地味にコンビニでのバイトと、家で趣味のDIYをしていたくらい。
でも、よく考えてみたら、週に3回の深夜シフトでミスをしない工夫をしていた。家族のために壊れた家具を直した。“誰かの役に立つことを、当たり前のようにやってきた”という日々が、確かにそこにあった。
「大きな実績じゃなくても、ちゃんと積み重ねた時間だ」
そう書き始めたとき、陽斗のペン先には、少し自信がにじんでいた。
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