「名刺の重みを感じた日」
内定者研修の案内メールが届いた日、真央は初めて「名刺を持ってきてください」という文字を見た。
まだ学生の自分に“名刺”という言葉が、少しだけ重たく感じられた。
その日の午後、文具店に立ち寄った。
名刺入れの棚の前で、いくつか手に取っては戻す。
派手すぎず、地味すぎず。どんなものが“自分らしい”のだろう。
ふと視線を落とすと、淡いブラウンの革の名刺入れが目に留まった。
手に取ると、しっとりと馴染む感触。
「これでいいかも」
その言葉の中に、ほんの少しの覚悟が混じっていた。
レジで会計を済ませ、外に出ると、秋の風が頬を撫でた。
真央は小さく息を吸い込み、空を見上げる。
社会人になるという実感が、ようやく現実として胸の中に広がっていった。
「次にこの手で名刺を渡すとき、胸を張っていられますように。」
そんな願いを込めて、彼女は新しい名刺入れを鞄の中にそっとしまった。
#内定者研修
#社会人の自覚
#初めての名刺

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